loveM’s Diary

嬲る仁義

アメリカンサイコ(2000)

映画『アメリカンサイコ』を鑑賞した。

どのシーンも記憶になかったので未視聴だったみたい。

舞台は1987年のウォール街、当時ヤッピーと言われていたエリートビジネスマンに潜む狂気を描いている、、、、ように見えるが実は物質主義に対する強烈な社会風刺が真のテーマになっている。と言うのも主人公を取り囲む同僚や友人との交流が異常なほど空虚であり、一方で高価なスーツや時計、鍛えあげた肉体や美容へのこだわりと他人への無感情ぶりは庶民感覚だと現実感がまるでない。仕事の話は一切なく話題になるのは食事をする店の予約の話ばかり。名刺の出来栄えを競って嫉妬、シリアルキラーぶりを仄めかす発言に対しても周りは軽く受け流す態度をとるなど、ここまで大袈裟にかつ大真面目に表現されるとその異常さが際立ちすぎてただただ笑ってしまう。殺戮シーンは最早とってつけただけのようだ。

主人公はサイコパス設定だが、中野信子先生の著書『サイコパス』によれば彼は勝ち組サイコパスではなく負け組サイコパスだと思われる。私立探偵にツッコまれるとアタフタしたり、犯罪場面を見られたらその場で射殺するなど感情のコントロールが出来ず予見能力がないため捕まるリスクが高い。

2000年の作品だが、多様性の考えが皆無の時代だったせいか、ホームレスは黒人、クリーニング店は中国人、エステ店は日本人で、エリートは皆白人層なのが意図的なのだろうが興味深い。

個人的にはヒューイルイス、ホイットニーヒューストン、ジェネシスなど80年代洋楽の話も沢山出てきたのが良かった。

それと怪優ウィレムデフォーが探偵役で出ていた。彼が異常者ではなくごく普通の役だったのが意外だったなあ。

 

クリスチャンベールは役作りで見事な肉体美を魅せてくれたが4年後の『マシニスト』でガリガリの体を作ることになる。『レイジングブル』で30キロ増量し、次作『告白』で30キロ落としたロバートデニーロのよう。

アカデミー賞の受賞履歴を見たが2010年の助演賞のみ。スピルバーグの『太陽の帝国』の少年役で初めて知ったが後年はコンスタントに大作やインディ作品に意欲的に出演したりして大物俳優になったものだ。

 

 

 

アメリカン・サイコ ―デジタル・レストア・バージョン