loveM’s Diary

嬲る仁義

博奕打ち 総長賭博(1968)

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もう何度も見てるけどいつ見てもプロットに感動してしまう博奕打ちシリーズ4作目の総長賭博を改めて。

まるでギリシャ悲劇のようだと三島由紀夫が絶賛したと言われていますが、義を重んじる任侠の世界に身を投じてきた男の悲哀と宿命を見事に描いた山下耕作監督の傑作だと思います。ヤクザの跡目争いを描いた作品は数多くあれど、周りの人物像を含め個人の思い入れが強く、全ての演出要素が90分の間に濃縮に詰まっています。

これ制作年度で言えばゴッドファーザーよりも前ですからね。見事。

 

あらすじは面倒なんでwikiから改訂しました笑

 

博徒一家の組長が倒れ、跡目に押された鶴田浩二は外様である事を理由に辞退、その兄弟分で服役中の若山富三郎にその位を譲るが、幹部の金子信雄は承知せず、名和宏を推挙し二代目に決定する。その襲名披露大花会を前に若山が出所、事情を知って激怒した若山は名和に殴り込みをかけるが果たせず、謹慎させられる。実は全て金子が組を乗っ取るために書いた筋書きだった。鶴田は花会を取り仕切る立場にあり、お互いの真情を知りつつも若山との兄弟の縁を切った。花会の日、名和は金子の乗っ取りを知り金子と対立するが刺客に暗殺される。金子に唆され立場上鶴田は若山を葬ることを決意する。

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人格者の鶴田浩二と、彼の兄弟分で暴走する若山富三郎とそれに対立する名和宏。そしていつも通り裏で糸を引いてるワルの金子信雄。これでドラマが出来上がってしまいます。

前述した通り、彼らを取り巻く人物も魅力的で

若山の妻であり、夫と兄の間で揺れる緋牡丹のお竜藤純子。まるで渡世人の如く最後に自決する鶴田の出来た妻桜町弘子。若山に忠誠を尽くすあまり余計なことをしでかした挙句散ってしまう三上真一郎。三上とひっそりと愛を育む服部美千代。その全員にもドラマがあるのです。

若山のプライドと鶴田の矜持が激しくぶつかりあったこその悲劇。日本人なら誰でも共感しますね。

ちなみに博奕打ちとか賭博とかタイトルにありますが、そんなシーンはほぼありません。花会の後に手本引きをちょろっとしてる程度。

ヤクザ、任侠映画ですが、外道じみた行為は全くなく、むしろ忠義心からくる統制がとれた礼儀正しい輩ばかり。

1968年正月に公開し当時の入りは伸びなかったようですが、三島由紀夫が絶賛したことにより評価され、芸術作品として市民権を得るようになりました。

妻の墓場で雨の中若山に啖呵をきり盃を叩き割るシーン、三上と服部が遊んだヨーヨーが伏線となった曽根晴美三上真一郎のシーン、不貞腐れた金子信雄の尖った口、ドスを持って立ち回る鶴田浩二など見所がたくさん。

悲壮感溢れるBGMも良いし無駄なセリフも一切ない。

この作品は本当におススメです。