loveM’s Diary

嬲る仁義

夢千代日記(1985)

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私の体の中に貴方の命をください。

臨終間近の吉永小百合のセリフです。

寂しくて死ぬ前に愛が欲しかった。

北王路欣也は彼女を受け入れます。

まだ会ったばかりだと言うのに笑

 

夢千代日記はドラマ版があって完結編として映画が作られました。映画化にあたり東映の首脳陣は主演の吉永小百合を死なせる条件にしたようです。それは吉永小百合も同意していたらしいですが、演出で監督と揉めてしまいました。

ちなみに私はドラマ盤は見たことがありません。

 

あらすじです。

山陰の温泉地で置屋を営む夢千代は神戸の病気で余命が少ないことを宣告されます。彼女は母親の胎内にいる時に原爆症におかされ、白血病を発症しています。

帰りの電車内で電車から飛び降りる自殺者を目にします。同じく目撃したのが旅芸人の一員北王路欣也。

警察の捜査が入りますが、北王路はなぜか及び腰

で目撃情報や捜査に積極的に関わりません。

置屋の芸者陣にはそれぞれストーリーがあります。

芸者の1人名取裕子前田吟に頼まれ、子供が出来ない妻の代わりに借り腹を決意します。

また同じく芸者の1人田中スーちゃん好子は妻子ある渡辺裕之に惚れるけどフラれてしまい自殺を図りますが、命を粗末にするなと吉永小百合にビンタされます。

もう1人の芸者斉藤絵里は、高名な画家、浜村純に見染められて絵のヌードモデルになります。浜村が若い体に興奮し、下心を出しはじめ襲いかかった際に心臓発作で急死します。

樹木希林は3人のような色事は特になく踊り子ではなく三味線を弾きつつ、旅芸人の座長とコミカルに井戸端会議なんぞをしています。

吉永小百合の病状は悪化、北王路が実は殺人犯で逃亡中ということが発覚。殺人は意図的なものではないのが、高倉健の映画みたい。

北王路は隠岐の島に逃亡します。体がボロボロなのに追いかける吉永小百合。魔天崖という名所まで追っかけます。それも一人で、山道登って、体悪いのにw

二人して愛を告白し合いとうとう結ばれます。

その際に発したのが冒頭のセリフと言う訳です。

愛の告白の際、吉永小百合が北王路に頭突きを喰らわせます。音がする程強烈で一瞬北王路が面食らうのが必見。

 

さて紅役の田中スーちゃん好子は惜しくも2011年に死去していますが、原爆絡みの映画にもう一つ出ていますね。それが『黒い雨』

上半身裸で櫛で髪をといたら大量の毛が抜けるシーンを覚えています。

鬼気迫るシーンを演じ確か日本アカデミー賞主演女優賞を獲ったはず。

 

またその田中好子に惚れられるファイト一髪渡辺裕之は今年の5月に謎の自殺をしています。

 

 

また監督の浦山桐郎はこの夢千代日記を完成した直後に亡くなっています。

吉永小百合とは『キューポラのある街』でも仕事していますが、『キューポラのある街』は浦山桐郎の監督デビュー作でもあります。つまりデビュー作と遺作で吉永小百合を主演に使っているなんて何か因縁めいたものを感じますね。

 

前述した通り演出で浦山と揉めました。

セリフで『ピカが憎い』と言わせたい浦山と言いたくない吉永という構図でした。

ピカと言うのは原爆のこと。『広島のピカ』という絵本がありましたね。

長年、夢千代を演じてきた吉永にとって臨終の際は恨みがましいことはきっと思わないと思ったのでしょう。

吉永小百合も言う時は言うのね。

 

浦山監督も個性豊かな昭和の人だったみたい。

女好き、酒好き酒乱、風呂嫌い笑

今そう言う人いないよね。