loveM’s Diary

嬲る仁義

非行少女ヨーコ(1966)

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クスリやめますか?人間やめますか?

という民放連のCMが昔ありました。これがトラウマになるくらい怖かった。だからクスリには一切興味が湧かなかったです。CMの効果的面。

映画に出てくる薬はハイミナールという睡眠薬で厳密に言うと市販されていたようだし麻薬扱いではないのかも。しかしながら60年代はこの睡眠薬を若者が乱用していました。

 

田舎から都会に憧れ家出上京してきた緑魔子(ヨーコ)は、表向きは親切にしながらも裏では欲望の吐口の対象とされてしまい、傷心の中知り合ったジャズ喫茶にたむろする連中からクスリの味を覚えさせられます。そこで出会った美術学生でウジウジした谷隼人と恋仲になりますが、ボンボンの谷は親の意向で大阪に行き、離れ離れになります。

魔子は谷と映画館見たフランスのサントロペへの憧れを持ちます(ちなみに発音はペ↑が強いので田舎言葉に聞こえるw)

クスリにハマってしまった魔子はラリってしまい、ある事件で警察沙汰を起こした時に仲間には保証人となる親兄弟がいて結局守られていることを目の当たりにします。彼らとは決定的に出自と考え方が異なることに気づき、つるみながらも孤独を感じます。更に仲間の1人が失恋で自殺、ナンパされた沖縄のボクサー東野英心も夢破れ試合に負け、現実は理想通りとは行かないということを思い知ります。クスリ欲しさに物乞いや体まで売るほど荒んだ魔子は絶望の中自殺を図ります。

 

ここまでは良かったんだけど最後無理矢理ハッピーな話にもっていってしまいました。

監督はこの作品がデビュー作となった降旗康男

高倉健とこの後数々の名作を生み出した東大エリートの降旗は、ヌーベルバーグにかなり影響を受けてこの作品を作ったと思われます。まずはオープニングのフリージャズが激しく流れる中緑魔子が口を何かを喋るようにパクパクさせる半カットシーンが斬新。このジャズの演奏シーンも日野皓正やナベサダが出ているようです。映画全編に流れるジャズも渋い。

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キャストも豪華。後に緑魔子と結婚するオカマの美容師役の石橋蓮司(演技が上手)この頃から現代でも通用しそうなキュートなルックスの大原麗子。チョイ役で寺山修司関口宏の父親佐野周二大坂志郎芳村真理(分からなかったけど)戸浦六宏荒木一郎まで出てきます。

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ラリっている描写で画面を横に縦に回転させたりするカメラワークが秀逸。更に無音の中での貪るようなラブシーンや追い詰められた魔子の心情を表すホラー描写やらかなり攻めていますね。

緑魔子のやさぐれ感は60年代の新宿にあっという間に溶けこみます。そして当時の新宿が所どころに出てきて興味深い。名曲喫茶らんぶるも出てきました。この店は先日彼女と行こうとした思い出の店なんです。あと文化的な世相というか、ボーリングやモンキーダンス、イヤミのギャグ『シェー』とかこういうのが流行っていたんだって思いました。

エネルギーを持て余した若者の享楽的な生き方と一方でそれを冷めた視点から寺山修司の言葉に代表される言葉で気づかせる演出。見事です。

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初監督でありながら堂々とこのような素晴らしい作品を生み出した降旗康男に感謝です。じつは彼にはヤクザ映画を撮るにしてもなんかナヨナヨしたイメージがあったので目から鱗でした。

前述した通りラストが予定調和で残念だけど多分

これは降旗康雄の意向ではなかったかもしれませんね。

日本を代表する和製ヌーベルバーグ作品だと思います。

あーサントラが欲しいけど廃盤なんだ、、、